最後の?IOFT2025に行ってきました

IOFT 最終開催に寄せて - メガネのイザワ

国内最大の眼鏡の展示会 IOFT 最終開催に寄せて


専門学校時代からの思い出とIOFTの変遷

こんにちは、メガネのイザワです。

長年にわたり、国内最大の眼鏡の展示会として業界人にとって特別な存在であり続けたIOFT(国際メガネ展)が、今年の開催をもってその歴史に幕を閉じることが決まりました。このニュースは、私自身を含め、多くの眼鏡小売店やメーカー関係者にとって、一つの時代の終わりを告げる寂しい出来事として受け止められています。

私が初めてIOFTの会場に足を踏み入れたのは、眼鏡専門学校の学生だった頃です。今から数えてもう30年近く前になりますが、当時の記憶は今でも鮮明に残っています。その頃はまだバブル景気の余韻が残っており、展示会全体が非常に華やかで派手な雰囲気に包まれていました。

各出展ブースは豪華絢爛で、商品の展示だけでなく、来場者をもてなすサービスが充実していたのです。ブースにはモデルのようなイベントコンパニオンが立っているのは当たり前で、商談スペースではフリードリンクが提供され、昼間からアルコール(お酒)を普通に頼んで商談を行う光景も見られました。会場全体は、全国から集まった来場者でごった返しており、本当に隅から隅まで細かく見て回るには、二日間の会期ではとても見切れないと感じるほどの規模と活気に満ちていました。

しかし、これもまた時代の流れです。近年では、そのような「展示会らしい派手さ」は影を潜め、次第に「商談会メイン」という実利的な雰囲気が強くなっていきました。それに伴い、大手メーカーなど一部の出展ブースがIOFTとは別の時期・別の会場で個別の展示会を開催するようになり、IOFT自体の規模は年々縮小していったという経緯があります。さまざまな「大人の事情」が絡んでいたことは想像に難くありませんが、ここ数年は、業界内で「今年が最後のIOFTになるのではないか」という声が、まるで恒例行事のように囁かれていました。そしてついに、その予感が現実のものとなったのです。

業界の特別な場所が失われることへの懸念

正確に言えば、来年の同じような時期に「ファッションワールド東京」という大きなイベントの中に、眼鏡やサングラスのブースが組み込まれる形になる可能性はあります。しかし、それはこれまでのように「眼鏡屋が年に一度の大きな展示会で、気合を入れて仕入に行く」と意気込むような、特別な行事ではなくなってしまうでしょう。

IOFTは単なる仕入れの場にとどまらず、全国の眼鏡小売店さんが一堂に会する「終結の場」でした。普段は遠方でなかなかお会いできない同業者の方々に再会し、情報交換をしたり、業界の動向について語り合ったり、親睦を深めることができる、年に一度の貴重な機会だったのです。この唯一無二の交流の場が失われてしまうことは、非常に残念でなりません。

ただ、この変化を前向きに捉え、来年以降、また別の形や名称で、同規模、あるいは同規模以上の新しい展示会が立ち上がってくれることを大いに期待しています。業界の新しい「顔」となるイベントの誕生に、ぜひ注目していきたいですね。

交流から生まれる『give&take』の重要性

今回、最後のIOFTの会場へ行き、改めて感じたのは、地方からの遠征組の方々を含め、多くの方とお話しできたことの重要性です。新商品を見たり、仕入れの交渉をしたりすることももちろん大切ですが、この他店との交流こそが、この展示会の最も重要な価値の一つだったと再認識しました。

同業者との対話を通じて、自分自身が今まで気づかなかった新たな視点や考え方を知ることができたり、逆に私の考えや経験が、誰かのビジネスのヒントになったり。このように、有益な『give&take』が、飾らない自然な形で発生していたことが、業界の発展にとって非常に大事なことだったと思います。

復活した「メガネ ベストドレッサー賞」への想い

そして、今回はしばらく休止していた「メガネ ベストドレッサー賞」が、この最終開催に合わせて復活しました。

今年の受賞者は、

  • 政治部門: 石破 茂 氏
  • 経済界部門: 成田 悠輔 氏
  • 芸能界部門: 木村 文乃 氏
  • VTuber部門: 加賀美 ハヤト 氏

という、現在の世相を反映した顔ぶれでした。朝の情報番組などで、授賞式の様子をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。

授賞式会場には多くの人が押し寄せていましたが、私は遠巻きに様子を伺うに留めました。この復活も「最後だから」という、特別な意味合いがあったのかもしれません。

眼鏡小売店として個人的に思うのは、メディアへの露出やイメージ向上という意味では大変喜ばしい一方で、賞の受賞者が「ちゃんとフィッティングされていない」状態で、本来は仮のレンズであるデモレンズのまま眼鏡をかけている姿を見ると、少し複雑な気持ちになります。眼鏡業界全体のイメージ向上を考えるならば、「正しいフィッティングと正しいレンズ選び」の重要性も、合わせて発信されていけば良いのに、などと、職業柄つい考えてしまいました(笑)。


結びに

近年は規模的に寂しいサイズ感になってしまいましたが、私が業界に入ってから「あって当然」だったIOFTという眼鏡の展示会が無くなることは、本当に一つの「時代の変化」の大きな節目だと、しみじみと感じています。

過去のメガネベストドレッサー賞の歴代受賞者を見てみると、その時々の著名人が名を連ねており、IOFTが眼鏡業界の中で担ってきた役割の大きさを改めて感じさせられます。(過去の受賞者一覧

この変化を糧に、今後、眼鏡業界の交流の場がより充実し、発展していくことを心から願っています。